現在の私達のルーツは明治の中ごろ(1891年)名古屋市中区丸の内(旧 桑名町)で曽祖父が始めた染物屋でした
以来110年間近く呉服の染物屋を営んできました 1970年代中頃 私が染物屋を継いだ時はすでに着物を着る人はとても少なくなっていましたが日本から着物が無くなることはないだろうと漠然とした幻想に似たものにもたれ掛かってきた気がします
ある時伝統とはしがみついたりそれを守り続けるだけのものではないことに気が付きました
時を経て伝わる技術も長い長い時間の流れの中で変化をし続けてきたのです 新しい技術に駆逐されて消えてしまったものもあればその時代時代の空気にあわせてゆっくり形を変えて熟成してきたものもありました そしてまた一度は途絶えた技術が何百年もの時を経て改めて価値を見出され復刻されたものもありました
私達は長い長い時間の中生まれては消え消えては再生する自然の営みの中に「あるヒント」を得ました それは私達の古来からのものの感じ方のひとつ「無常感」です かた時としてとどまることの無い姿にもののあわれを感じる 時とともに移り行く姿に美しさを感じるそんな美意識を素晴らしいと思います そんな自分達が静かに受け継いできた美意識に気づかされた時 呉服の染で培った技術や感覚を別の形で表現してみようと思いました 今の時代の空気を呼吸する私達が形だけの伝統におもねるのではなく自分達というフィルターを通して紡ぎ出すことを試みようと思いました
私達は新しく[ManuFact]というオリジナルブランドを立ち上げます 名前の由来は「手づくり」という意味をこめた造語です この名前が象徴するように実際の手作業でモノ作りすることにこだわります 大量に物が作られ消費される時代の空気をいやというほど吸いこんで辟易した私達が導き出した答えの一つの形かも知れません 人の手が紡ぎだすものの美しさ温かさを私達は大切にしていきたいと思います 古きよき昔を懐かしむだけでなく時代の空気を呼吸した私達にしかできない何かを紡ぎだそうと思います